イエロースターからの11月のおはなし
 きむらゆうこ






スミオネとカリオネがとびたって
しばらくすると東の空がうっすらと明るくなってきました。
するとどこからか、かわいいこえがきこえてきます。今度は、お菓子の妖精たちが星屑や星のかけらにのって舞い降りてきました。
お菓子の精たちは小さな七色の粉のはいった瓶を大事そうにだきかかえています。
星屑達から降りると、妖精たちはそれぞれのお気に入りの場所に飛んでいきます。最初に飛び立ったのはブルー、ピンク、イエローの羽根をつけた3人の妖精たちです。赤い屋根の洋館をめざして飛んでいきました。
お気に入りの場所というのはハートのいっぱいつまった美味しいお菓子のあるところです。たとえば、街角のケーキ屋さんだったりあなたのお家のキッチンだったりと、心のこもった美味しいお菓子のあるところです。
クリスマスが近くなると、いつもよりお菓子がおいしくなるとおもいませんか?
それはきっと、お菓子の妖精たちが「おいしくなあれ!おいしくなあれ!」って…おまじないをしているからですよ。
さて、3人妖精たちは赤い屋根の洋館につくとそこのお家のいろんな妖精たちに「こんにちわ」をいってキッチンの方へ飛んでいきました。お家の中にはいると、お菓子のやけるとてもいいにおいがひろがっています。
キッチンでは、ここのお家のママがお菓子をつくっているところでした。3人は気ずかれないように、そーっと窓辺のカーテンにかくれてママがお菓子をつくっているところを見ることにしました。
そうそう!この子たちのお名前をしょうかいしましょうね。3人とも女の子達です。
レンとモーとミリーといいます。
さて、キッチンでママは
ドライフルーツがいっぱいはいったクリスマスプディングやバターとたまごのたくさんはいったビスケットやクッキーを焼いています。
テーブルの上には、ママが作ったフワフワのスポンジケーキや、真っ白な生ミルクとベリーののったおいしそうなケーキがならんでます。焼きあがったビスケットやクッキーもならんでます。
あーいいにおい!そしておいしそう!次々とおいしそうなお菓子ができあがっていきます。
プディングもできました。
プディングは、布にくるんで風通しのよい窓辺につりさげられました。ちょうどレンとモーとミリーの頭のすぐ上につり下げられましたのでびっくりしました。
クリスマスプディングはこれから1ヶ月ぐらいこのままにしておくようですね。
「さてと…これでいいわ!」ママの今日のお菓子作りはおしまいのようです。そういうとママはキッチンからでていきました。
さあ,ここからが、3人の出番です。
レンとモーとミリーは、カーテンのなかからあたりを見回しながらでてきました。
レンは砂糖ツボの上、モーとミリーはコーヒーカップの持ち手のところに、それぞれがバランスをとりながら立とうとしたています。ところが、ミリーがバランスをくずしてコーヒーカップのなかにおちてしまいました。さいわいカップのなかには少しだけしかコーヒーは入っていませんでしたが、ミリーは尻もちをついたのでご自慢の伸びやかな黄色の羽根がよごれてしまいました。ミリーはとてもかなしくてなきながら、流し台のぽたりぽたりとおちてくるお水で羽根を洗いました。それからしょんぼりして窓辺で風に当たりながら羽根を乾かしました。なによりおしりが痛かったのでもっとかなしくなったのです。レンとモーは、ミリーのできごとに噴き出しそうになりましたが、笑いをこらえてミリーに言いました。
「大丈夫?ミリー!」
ミリーはなんとか「大丈夫…」の顔をして立ち上がりました。ミリーはまだ羽根もおしりも大変な状態なのでレンとモーのところまでは飛べそうにありません。それなので窓辺から、おまじないをすることにしました。
三人は、七色の粉を左手の指先にちょこんとのせてサーッと小さな風をおこしました。そしてお菓子をしっかり見つめて、妖精のつえ高らかにふりおまじないのことばをとなえました。「mahi!」
すると、キッチンのお菓子たちはまるでママがにっこりわらったみたいに光り輝いてきました。そしてさっきよりももっとおいしそうないいにおいがしてきました。
こうしてまちのあちらこちらで妖精たちがお気に入りの場所でおまじないをしたので少しずつ少しずつ、お菓子のいいにおいが街中にひろがっていきました。
こどもたちはもちろんのこと大人も本当にシアワセな気持ちになっていくのでした。
そんな街の人を見てお菓子の妖精たちはとっても嬉しくなりました。
そして11月の最後の日にうれしい気持ちをうたいたくなって妖精たちは手をつないでうたいました。そのうたは、とびきり嬉しいことがあった時に歌う曲で、「スキップダンス」という曲です。歌ってスキップダンス回ってうたってスキップダンス!お菓子の妖精たちはしばらくスキップダンスをたのしんでいました。そうしているうちに、星のカケラや星屑たちがお帰りのおむかえにきました。
そしてたのしくうたいながらイエロースターに帰っていきました。




10月のおはなし

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